PCS

ミリタリーの宿命 PCS 2

年間約40万人のサービスメンバーがPCSをしています。うちは今年、私は来年、と誰かしらが主に夏と冬に移動をしている状態です。2年~4年でPCSになるのが一般的です。

PCSの基本的な流れ

1:ソフトオーダーをもらう

Soft orderというのはミリタリーの正式な用語ではないですが、完全に確定していないオーダーのことを言うようです。紙の状態のオーダーではありません。ここから変わることも当然あります。

PCS自体は決まっているが、どこに行くかわからないことは、ままあります。半年~3か月前くらいに決まることが多いですが、PCSは命令なのでたとえ2週間後に移動しろと言われても従うほかありません。全然オーダーが確定しなくてもそういうものだと思って待っているしかないです。上からオーダーが下りてくるのを待つしかないです。具体的な日付が直前まで決まらないことも、もちろんあります。待つ。ただ待つのです。

2:オーダーを見て一喜一憂する

希望通りの基地や州や国になりましたか? そうじゃない? そういうこともあります。グッドラック。 第一希望? ツイてますね、いいなー!とりあえず乾杯しましょう。

3:オーダーをよく見て必要なことを割り出す

もしかしてそのオーダー、OCONUS(アメリカ本土以外)ですか? コマンドスポンサーシップの申請の準備をしましょう。

4:ハードオーダーをもらう

Hard orderもしくはphysical order。ちゃんと紙に印刷されたオーダーです。ここまでくると正式なものなので、本決まりです。チェックすべきなのは

・REPORT TO COMMAND NEW ASSIGNMENT(新しい基地で働きはじめる日)

・OCONUSでコマンドスポンサーシップを取得しているならDependant欄に名前があるかどうか

今後いろいろ必要になるのでオーダーは複数枚、用意しておくと便利です。ビザを取る必要がある場合はマストです!

5:あらゆる手配をする

まず最初に基地のtransportation officeにアポを取ります。ここで今回のPCSにどんなオプションがあるか教えてもらえます。ブランチによって該当のオフィスの名前が違います。

空:Traffic Management Office

陸: Installation Transportation Office

海・海兵隊:Personal Property Shipping Office

湾岸警備隊: Household Goods Shipping Office

基本的にOCONUSに行く場合は軍が契約している引っ越し業者が決まっているので自分で選定する必要はないです。OCONUSからCONUSに戻る場合も同様です。

CONUS→CONUSの場合は二つの選択肢があります。

・Transportation Service Provider (TSP)に全部やってもらう

段取りも箱詰めも輸送も全部軍の委託業者にやってもらうスタイル。ランクによって最大の持っていける重量が決まっています。またペットの移動は自分たちで手配する必要があります。

・Personally procured move (PPM)

DIY精神で自分たちで全部手配します。重量によって手当の金額が決まっているので、自分たちで安い業者を見つけたり、自力で運んで軍の指定金額より安く済ませることができれば、ポケットマネーになります。

あと他に連絡すべきはPCS先のファミリーセンター、現在のハウジングオフィス、現在のファイナンスなどです。

6:移動!

荷物や家財を送ったら自分たちも移動です。PCS先で新居が見つかるまでのホテルステイの準備をします。最近はAirbnbなどの民泊に泊まる人も多くなりました。領収書類は必ずキープしておきましょう。

韓国へのPCS

2020年2月に次のオーダーが決定しました。それが現在いる韓国です。夫はこれで4回連続のOCONUSへのPCSというかなりレアな経験をすることになりました。(韓国→日本。ここで私と出会って結婚→欧州→韓国)

オーダーをもらった時点では欧州ではさほどコロナは問題になっておらず、日本大変だね~と在欧の友達と言い合っていました。しかし一転、3月半ばからほぼ全欧でロックダウンや国境閉鎖などの措置が取られることに。韓国もこのあたりから新規入国者を制限、ビザ免除の停止などの水際措置を取り始めます。

そして米軍も全サービスメンバーにPCSやTDYなどの移動を制限、中止、延期するStop movement order(Travel Restrictions)を発令。これは2021年1月現在も取り下げられてはいません。

これによって我が家のPCSも遅れるかな~と思っていたのですが、夫のポジションはこの命令の範囲外になるそうで、予定通りPCSせよ、という除外通知をもらってきました。

さて、行先の韓国。通常であれば日本のパスポートがあればビザが免除されるので特に何もせず入国ができます。しかし今回は入国制限があります。夫はともかく私はどうなのか? 

PCS先の韓国のコマンドではコマンドスポンサーシップ(CS)があれば問題ないでしょとの回答。確かに私はすでにオーバーシースクリーニングも済ませ、欧州に続き韓国でもCSを取得済みでした。CSがあるのでハードオーダーにも私の名前が記載されています。

でもこれってあくまで「米軍」での制度なんだよなあ、、、本当に大丈夫なのか? と悶々としばらく過ごし、もう一度韓国大使館のサイト、日本の外務省のサイト、を見て回った結果、気付きました。

「いや~これビザないと無理でしょ だってそう書いてあるもん」

ということに。

もう一度韓国のベースのリーガルに確認してくれ、と夫に英語の韓国の入国情報などを送り、再度お伺い立てることに。

すると今度はやっぱビザいるわ、との回答。

ほらね~~~!

米国籍(市民権保持者)ならいいんですよ。韓国は米国、英国など一部の国はビザ免除を維持していたので。(韓国政府は韓国に対して入国制限をしていない国に対してはビザなし渡航を許可する方針だった。それに対し、日本はお互い入国制限をしている状態)

そして2020年夏のPCSシーズンが到来し、韓国に入国拒否される外国籍ミリ妻が増え(ドイツなど)、公式フェイスブックでようやく市民権ない人は気を付けてね、のアナウンス。

私が入国に必要なA3ビザのことなんて知らない現地の韓国大使館に連絡しててんやわんやでした。コマンドは何ビザが必要なのかはわかってなかったので、自分で調べました。

A3ビザは韓国がSOFA協定のもとに発行してるビザなのでまあまあ特殊なのです。でも大使館職員はレスポンスも早く、無事にビザはもらえました。大使館には申し込んだ時と受け取った時の2回行きました。ちなみに米韓の協定によるビザなので無料。

ここで豆知識ですが、ミリタリーIDをベースに発行される今回のようなビザの場合、IDとパスポートの名前が一致しているほうがスムーズです。大使館職員はオーダー、ID、パスポート、結婚証明書、全部の名前が一致してるかとてもよくチェックしていました。

あと教訓として、軍は基本、家族(配偶者)もアメリカ人だと思ってルールができています。だから外国人配偶者のパターンとか考えてないんですよね。今回みたいな時もいけるっしょ!みたいなノリで言ってきたし、夫もいけるでしょって言ってましたが、あえなく入国拒否されるところでした。全然いけない。

軍人、軍の力を過信しすぎ。なんでもかんでもできるわけじゃないんだなあ、というのが学びでした。

アメリカでの家賃をカバー BAH

お金に関するワード

ビーエーエイチ(The Basic Allowance for Housing)はアメリカ本土における米軍の住宅手当(家賃補助)です。基地内住居(ミリタリーハウジング)に住む人はもらえません。金額は所属する基地(Duty location)ごとに設定されています。

アメリカ本土以外(OCONUS)の場合はOHAという違う住宅手当制度が利用できます。

さらに詳しい説明は下のリンクからどうぞ。

BAHではいくらもらえるのか?

ランクと家族がいるかどうかによって金額が変わってきます。

独身か、そうではないか、の二つの違いしかないので配偶者一人のみでも、配偶者と子供1人でも、配偶者と子供5人でも金額に変化はありません。

例えば、カルフォルニア州エドワーズ空軍基地では、家族アリだとすると、2021年1月現在は

E-4は$1857、E-6は$2,013、O-3は$2,373

とランクが高いほうが金額もアップします。

BAHは周辺の民間市場価格に合わせて決定しているので、市場の変化に合わせて金額は変わります。年一回、1月1日に金額が査定されていますが、だいたい2%から5%の間で変動するのでさほど大きな変化は通常ありません。

BAHは金額保障される

市場価格が下がり、改定されたBAHが今までもらっていた金額より低くても減額されることはありません。改定金額が以前より増えていた場合は増額した分ももらえるようになります。

ただし、PCSした時(次の基地のBAHに変更となる)、降格した時(降格したランクのBAHに変更されるので減額になる)、扶養家族に変化があった時(結婚または離婚など)の場合はその限りでありません。

家を買ってもBAHは同じ

BAHは賃貸住宅の市場価格に合わせて設定されています。BAHを家を購入した分のローンにあてても問題はありませんが、別途増額されたり、減額されるようなことはありません。

またBAHより高い家賃の家を借りても増額はされず、足が出た分は自分たちで払う必要があります。逆にBAHより安い所に住めばその分、お金は浮きます。


海外での住宅手当 OHA

お金に関するワード

 オーエイチエー。Overseas Housing AllowanceのことでOCONUSでのBAHにあたります。(LES上では変わらずBAHと書かれていることもあります)。OCONUSでバラックスやベースハウジング(基地内住居)に住まない軍人または軍人とその家族に支払われる家賃です。

BAHとの違い 

BAHとの大きな違いは一定の金額が支払われるBAHに対し、OHAはハウジングオフィスに提出した家賃分しか支払われないということです。ランクと家族の有無によって金額が決まっているのはBAHと同じで、ランクが高ければ高いほど金額も高くなります。

また、家族と一緒に住んでいてもCS(コマンドスポンサーシップ)がない場合は、Singleとしての金額しかOHAとしてもらえないこともあります。

コマンドスポンサーシップについてのさらに詳しい説明は下のリンクからどうぞ

OHAの仕組み

例えば、OHAの上限額が1500ドルで月額家賃1600ドルの家を契約した場合、毎月100ドルは自腹になります。逆に1400ドルの家を契約しても1400ドルしか振り込まれません。100ドル多くもらえるわけではありません。

OHAの金額はDefemce Travel Manegement Office のサイトで一般に公開されているので、すぐに調べることができます。

OHA Calculator

PCSの滞在費をカバーするTLA

お金に関するワード

ティーエルエーはTemporary Lodging AllowanceのことでOCONUS(アメリカ本土以外)へのPCSの際にかかる滞在費をカバーする制度です。CONUSへのPCSの際に使える制度ではありません。

TLAのカバー範囲

現在いる国(OCONUS or CONUS)で家を引き払ってから飛行機に乗るまでのホテル代、PCS先の国(OCONUS)に着いてから家(一般の借家だけでなくミリタリーハウジングに移り住む場合も含まれる)に入居するまでのホテル代が主に支払い対象になります。

基本的に出発前の10日間、PCS先に到着後の10日間の計20日分を計上することができます。PCS先で家が見つからない、ミリタリーハウジングの空きを待たなければならない事情があるなどの場合、PCS先のハウジングオフィスの裁量で延長される場合もあります。ハウジングから延長許可が下りない場合は10日すぎると自分たちで支払うことになります。

TLAのもらい方

自動的に払い込まれるわけではないので、基地の経理部門にホテルの領収書(領収書はADの名前で発行したほうがあとでスムーズ)とハウジングオフィスの何日分のTLAを許可しますという主旨の書類を提出する必要があります。

どのホテルでもオッケー!ではない

PCS先に着いてから10日間で家を見つけなきゃ!と言われているのはこのTLAがあるからです。軍が払ってくれるから~とスイートルームに滞在してもそれは払われませんのでご注意。現地の平均的な価格までです。またどのホテルでもいいというわけではなく、基地内にホテルがある場合はそのホテルしか泊まれない(それ以外だとTLAが支払われない)ということもあります。

ミリタリーの宿命 PCS 1 

ミリタリー生活につきもののPCS(permanent change of station)。つまり転勤です。基本的に既婚より独身、エンリステッドよりオフィサーの方が周期が短く、2年~4年で移動する人が一番多いです。

もちろんそれよりも短い、長い場合もあります。PCSは命令なので拒否することはできません。どうしても行きたくない場合は除隊するしかないこともあります。

エンリステッドもオフィサーもPCSの際、希望の基地を提出することはできますが、あくまで希望。オーダーが出たら望んだ場所でなくても引っ越しの準備です。

コマンドスポンサーシップ/ノンコマンドスポンサーシップ

Command Sponsorship/Non-Command Sponsorship。CS/NCSもしくはNCOと略称が使われることも多いです。アメリカ国外(OCONUS)にPCSが決まった場合に必要になるかもしれない制度です。簡単に言えばアメリカ国外でもADだけではなく、Dependantに対してもミリタリーのベネフィットをあげます、という仕組みです。

渡航費や、現地での医療、子供の学校、家賃補助などに影響します。CSは必ずしもオーダーに自動的に付帯されるものではありませんので申請する必要があります。PCS先によってはそもそも家族を連れていけない基地もあります。全ての基地でCSが必要ということもないですが、逆にCSがないなら家族の帯同を認めないという場合もあります。

コマンドスポンサーシップについてさらに詳しい説明は下のリンクからどうぞ

OCUNUSへのPCS

2021年1月現在、未だにCovid19によるパンデミックは収まっていません。世界各国でロックダウンや入国制限をしているため、以前は日本のパスポートがあればビザなし渡航が可能だった国に簡単に入国できない事態が発生しています。これは軍のオーダーによって移動するPCS時でも例外ではありません。

基本的に米軍はDependantも米国籍(市民権保持者)だという想定の下で動くので、米国籍ではない家族、永住権保持者(Green card holder)のためのビザの情報は、移動先の基地やコマンドから提供されないと思ってください。自分で調べるしかありません。

「OrderにDependantの名前が記載されているから大丈夫」というようなことを言われるかもしれませんが、全然大丈夫じゃないこともあります。(事実、2020年9月に渡韓しましたが、あやうく入国拒否されるところでした)米国のパスポートを持ってない人はしばらく注意が必要です。