制度に関するワード

SOFAとミリタリーの関係

Sofa(ソファ)はA status of forces agreementの略で、戦力地位協定のことです。米軍が自身の軍を駐留させている国(ホスト国)と結んでいる協定で、駐留している軍人やその家族の権利を確立し、生活をサポートするものです。

米軍がSofaを結んでいるのはイギリス、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、韓国、日本などです。日本人で日本で現在の米軍関係者の配偶者と出会った人(多数の方がそうだと思います)にはあまり馴染みがないかもしれません。私も日本にいるときはYナンバーの車を運転するのに必要だな、ぐらいの認識でしたが、アメリカ以外の国に駐在することになり、どういうものかわかってきました。

Sofaは国と国との協定なので、日本とアメリカ、ドイツとアメリカ、韓国とアメリカと違う国同士で結ばれたSofaはそれぞれ違う協定です。

おおむね、どのSofaでも

・基地の外、または任務期間中以外では、ホスト国の法令に従うこと

・米国軍人、基地内勤務者(コントラクター、シビリアンワーカー含む)及びその家族に対し、適用されること

・任務期間中である限り、ホスト国を自由に出入りできるビザの提供

・米軍施設内での免税の措置

などが定められています。

他にも関税、郵便物の扱い(APO/FPOアドレス向けのもの)、家族に対する就業許可が可能かどうか、運転免許が発行できるかどうかなどがあります。

FPCON 危険度を表す目安

読み方はエフピーコン。Force Protection Conditionの略で、米軍基地の入口には必ず掲示されています。また軍病院や施設の入り口にもサインがあるので見たことがある人が多いかと思います。FPCONはテロリストや危険な勢力に対する危険度を表しています。

こちらも五段階表示で Normal, Alpha, Bravo, Charlie,Deltaの順です。これも基地によって多少違いはありますが、だいたい以下のような基準です

Normal

テロ活動といった世界的脅威が存在し、日常的にセキュリティをコントロールする必要がある場合。基本的にこれがスタンダードですが、経験上、多くの基地がAlpha以上であることが多い。また少なくとも陸軍基地では2001年以降、すべてBravo以上が設定されているようです。最低限、すべての国防総省の施設と施設でアクセスコントロールが行われている状態。

Alpha

サービスメンバーや施設に対するテロ活動の可能性が増大し、その脅威がどのようなものか予測できない場合。と言われてるんですが、これ文面そのまま受け取ると怖いですね。 

Bravo

テロの脅威が増大している、または予測可能な場合。いやこれもだいぶ怖いけど、何度かこの状態の基地を見たことがあります。

Charlie

テロでなくても事件が発生した場合や、何らかの形でのテロ行為や、人や基地を標的とするテロの可能性の情報をすでに軍が把握している場合。これは未経験です。

Delta

テロ攻撃が発生した直後の近隣エリアや、特定の場所や人物に対するテロ行為が差し迫っているとの情報がある場合に適用されます。Deltaはかなり緊迫した状態なので基地へのアクセス制限があります。

HPCON 米軍のコロナ規制

読み方はエイチピーコン。もともとあった言葉のようですが、コロナ禍のなかで一気に知名度を上げた言葉です。皆の健康を守るために、皆が守るべきルールの強度。というところでしょうか。Health Protection Condition Levelsの略で0(ゼロ)からD(デルタ)までの5段階あり、Dに近づくほど強い規制になっていきます。

原則的に、軍はADの家族といった民間人を罰することができません。ですが、その責任をADが取ることは十分考えられるので、規制、ルールには従うべきです。

各コマンド、基地ごとにさらに細かい規定がありますが、DoDが定めているベーシックなものは以下のようになっています。

https://www.defense.gov/Explore/Inside-DOD/Blog/Article/2128863/hpcon-understanding-health-protection-condition-levels/

HPCON 0

ルーティンとも呼ばれています。このルールが基本となります。

・具合が悪い人とは距離をとる

・石鹸と水で手を洗う

・くしゃみや咳のマナーを守る

・健康的な食事と適度な運動をする

・病気になったら家から出ない

・インフルエンザの予防注射をする

HPCON A(アルファ)

上記の0に加えて

・定期的な清掃と消毒

・具合が悪い時にクリニックや病院に行く前に連絡し、指示を仰ぐ

・CDC(疾病対策予防センター)などから最新の情報を手に入れるよう努力すること

HPCON B(ブラボー)

ここからちょっと厳しくなってきます。

・ソーシャルディスタンシングをする(握手やハグをさける)

・病気の感染が頻繁に確認されているエリアに不必要に行かない

・子供やペットに必要な食料や備蓄、薬などを少なくとも14日間分用意しておく

・旅行が制限される可能性がある

・学校や公共の集まりが中止される可能性があるため、チャイルドケアなどの準備をしておく

・基地内の施設のアクセスが制限される可能がある。ガイダンスには従うこと。

・必要があれば自己隔離を行う。コマンドやメディカルの指示には従うこと。

HPCON C(チャーリー)

今現在(2021年2月)はこの措置がOCONUS,CONUS含め、一番厳しいようです。

・対面で人と会うことが制限されます。学校やチャイルドケアサービスも閉鎖される可能性が高くなります。

・長期間、家に閉じこもらければならない事態が想定されます。室内でのアクティビティの用意や食料の確保などを行います。

・基地へのアクセスも厳しく制限される可能性があります。あらかじめ準備をしておきましょう。

・リモートでの勤務が行われる場合があります

・OCONUSの場合、出入国が制限されることがあります。

HPCON D(デルタ)

ここまでくるとかなり深刻な事態です。自宅待機、自主隔離が求められるの可能性が非常に高いので食料や備蓄の確保を行い、軍、州、連邦当局など所属しているコミュニティのガイダンスにはすべて従います。OCONUSの場合はホスト国の要請に従うのも必須です。

ミリタリーの休暇 Leave 2

リーブはいつ取れるのか?

リーブを申請するのはいつでもかまいません。ただし希望の日付や日数が承認されるかどうかはコマンド次第です。重要な演習やトレーニングがある場合は承認されないこともあります。

ブロック休暇(block leave)と呼ばれる、部隊やチームごとにコマンドの指示で一斉にleaveをとることもあります。これは主に夏季休暇やクリスマス、デプロイの前後などです。

リーブの取り方

基地やコマンドによって方法はさまざまですが、「leave chit(休暇申請書)」と呼ばれるものを提出しなければならない時もあります。アナログなペーパーワークが必要だったり、オンライン上で済むこともあります。

どの方法でもコマンドが承認するまでは勝手に休むことはできません。また承認された場合も休みに入るときに「チェックアウト」、仕事に戻るときに「チェックイン」といった通知作業を行わなければなりません。これは電話やメールでOKな場合もあります。

リーブは売れるのか?

次の三つの場合には売れます。手当分は含まれず、基本給分で売ることができます。

・リエンリストした時

・リエンリスト(契約)を延長した時

・除隊した時(リタイアではない)

リーブは土日でも消費する

たとえ、非番の日であっても、週末であってもサービスメンバーは毎日24時間、いつでも非常招集に応える義務があります。ただし、リーブをとっていれば呼び出されることはありません。

例えば、通常土日が非番の人が金曜から次の次の月曜までリーブをとったとすると10日間のリーブを消費することになります。通常休み分の土日もリーブとしてカウントされ、使用することになりますが、長い休暇が保証されます。

ミリタリーの休暇 Leave 1

ミリタリーの福利厚生の一つとして、年間30日間のLeave(休暇)があります。

入隊した時はゼロですが、ひと月ごとに2.5日づつ増えていく計算になっており、どんどん累積していきます。使わない限りどんどん増えていきますが、貯めておけるのは60日までで、それ以上は消えていきます。

特別な事情があれば60日以上持ち越すことができますが非常にまれなケースです。そうでなければ、年度末の9月30日に60日をオーバーした分が失われます。

リザーブにも働いていた分だけLeaveは発生しますが、ADとは違うルールで使用することになっています。

コマンドはサービスメンバーにLeaveを適宜とるように求めていますが、基地によって使用ルールは様々です。基本的に基地から遠く離れているときはLeaveの使用が求められます。これは緊急招集に応じられない場合があるからです。

一例ですが、私たちが欧州にいたときは「陸路で8時間以上かかる場所」に行くときはLeaveを取得しなければなりませんでした。

Covid-19による特別措置

収まらないパンデミックの中でLeaveをとることができないサービスメンバーのためにDoDから特別措置が発行されています。

2020年3月11日から2020年9月30日の間に現役だったサービスメンバーは、最大120日のLeaveを取得し、2023年9月30日まで使っていないLeaveを維持することができます。

秘密を守る OPSEC

OPSEC (operational security)はミリタリーの家族として守らなければならないルールの一つです。

シンプルに言うと、「デプロイや作戦行動の機密を公にしないこと」です。人に言うのも、ネット上で公開するのもどちらもダメです。秘密を守ることで軍人を守り、作戦を問題なく遂行できるようにしなくてはならないのです。

OPSECの作戦に参加中の軍人は家族と全く連絡の取れない場合もあります。機密度が高いと家族にも何も言えないのです。

OPSECに関して、「Loose Lips, Sink Ships」という言葉があります。「不用意に話したことで船が沈む」といったような意味です。なんてことはないおしゃべりのつもりが人の命を奪いかねないということを表した第二次世界大戦時のスローガンです。

なにを言ってはダメなのか

・特定の配備される日や移動予定日、帰還予定日(あと何日で帰ってくる!もNG)

・部隊の名前、機材の種類、船の装備品など

・具体的な基地や港の名前(アフガニスタン、までならOK)

・「サンディエゴを出て、ヨーロッパ、そして中東の基地へ」などの行程、作戦に関わる人数、演習内容

・「いつ、どこで、だれが、なぜ」がはっきりわかることは避けるほうが無難です。

カギをかけてるからOK!ではないSNS

・その写真に場所が特定できるものが移っていないか?

・(デプロイから)予定より早く帰ってくるらしい、遅くなるらしい、などの噂もさける。

・写真自体に位置情報が載っていないか?

罰則はあるのか?

不適切な行動や投稿はコマンドに見つかることもあれば、通報されることもあります。軍では、民間人が電話やSNS、対面でのおしゃべりなどで秘密漏洩したことを罰することはできません。

その代わり、その情報源となった軍人、ミリタリー関係者側を漏洩の責任を問うことができます。秘密を守ることは家族を守ることにつながります。

除隊の種類

除隊(Discharge,Separation)は勤続年数20年以下で軍を離れることです。除隊にはいくつか種類があり、それぞれ除隊後に受けられるベネフィットが大きく違ってきます。

Honorable Discharge

名誉除隊。これは、一番上のクラスの除隊です。与えられた任務を忠実に遂行し、仕事ぶりが軍に貢献したと言われるもの。

General Discharge Under Honorable Conditions

名誉除隊条件下の一般除隊。ほとんど名誉除隊だが、一部なにか問題があった時の除隊。軍の規範に従わなかったり、規律違反があった場合の除隊。除隊理由によっては今後の就職や再入隊に影響することがあります。またGIビル(軍の奨学金制度)は受け取れません。

Other Than Honorable (OTH) Discharge

軍法会議を必要としない除隊の中で最も下のランクの除隊。
秘密の漏洩、民間組織や民間人とのトラブル、暴行、薬物所持、などが理由となります。
再度、入隊するのが難しくなります。また、受け取れるベネフィットが限られてきます。

Dishonorable Discharge

不名誉除隊。最も下のクラスの除隊です。軍法会議(court-martial)によって決定した結果になります。脱走、殺人、詐欺などのほか、制服を着用中に犯罪行為を行った場合も対象となることがあります。

不名誉除隊の場合、再び兵役に就くことはできず、すべてのベネフィットが剥奪されます。

Medical Discharge

医療除隊。病気やけがなどによってこれ以上兵役を続けるのは難しいと医学的に判断された場合の除隊。Medical Dischargeと認定されるまで長い時間がかかることがあります。